2019年07月20日

最低賃金と私たち

参院選が近いです(あれ、もう明日だ)。


公約で目立つのが「最低賃金の引上げ」。


自民が1,000円、立民が1,300円、共産が1,500円。


まずこの数字を見たときに思ったのが、「金払うのはうちらなのに勝手に公約にするんじゃねえよ!


ということです。


立民は「中小企業の支援を拡充する」と言ってますが、いったいどんな具体的な施策があるのかよくわからない。そもそも(旧)民主党のかけ声倒れは得意技ですからね。


共産は例によって「大企業への行き過ぎた減税をやめることで財源を確保できる」と言いますが、企業の業績が悪化した場合はどうするのでしょうか。財源がなくなり、高い時給だけが残るのではないか。


当然のことながら、世の中には賃金を払う側より、受け取る側の方が圧倒的に多い。その票田の機嫌をとるためなら、中小企業やわれわれ零細農家は結局どうでもいいのではないか、どうも釈然としません。


・・・と思っていたのですが、あるネットニュースの記事を見て考えが少し変わりました。


最低賃金アップで『生産性が向上する』仕組み

デービットアトキンソンという人(伝説のアナリストらしい)の寄稿です。


最低賃金を強制的に上げれば、経営者は生産性向上に努力せざるを得ない。それによって日本の経済は上向き、増える一方の社会保障費もまかなっていけると、そういう話です。


日本の労働生産性が先進国最低レベルだというのは、ようやく日本人が自覚し始めているところで、中でも農業の、とくに果樹産業なんてのは、かなり足を引っ張ってる劣等生です。


ここは被害者意識を捨てて、必死になって生産性を向上させて、もっと高い時給を払える農業経営にする・・そう考えるべきなのかもしれません。

高品質多収の生産技術を習得する、作業のしやすい園地にする、アルバイトに適切な指導をする、生産と販売のバランスを上手くとる・・等々、できることはいろいろあるはずです。


扶養に入っている奥様方は、収入を扶養の範囲に抑えるため、時給が上がれば働く時間を減らすので、労働力不足が改善されない、という考えもありますが、「仕事時間を減らしても、仕事が回っていく仕組みづくり」をするべきなのでしょう。余暇が増えれば使うお金も増え、出産、育児にまわせる時間も増える・・


ただ、いくらにするべきかと言うと、やはり「仕事のできる人」「仕事にたいして意欲のある人」とそうでない人の給与に差をつける余地は必要と思うので、あまり高くするのは好ましくない。「やる気があってがんばっても、給料は一緒」では優秀な人のモチベーションが下がって、これまた生産性低下は必至ですから。


それにしても、政党に押し付けられるのはやっぱりシャクですね。

自分たちの無策の責任をこちらに転嫁しているようにどうも思えてしまいます。


先だって、政府は携帯料金が高いと大手各社に難癖をつけて値下げを強要しましたが、格安スマホが普及した今、それほど高いとは思えません。いろいろやるから高くなるのであって、通話・メール+ほどほどのネットならむしろ一昔前のガラケーよりコスパは遥かに高いでしょう。携帯各社の企業努力の賜物です。


3のビールへの課税もそうですし、企業が努力して、その成果から国がむしり取るのが

常態化しているような気がします。


政治ではなく経営側ががんばらなくちゃどうにもならないのが日本なのかも。


posted by 農天気 at 18:59| Comment(0) | よもやま話

2019年07月13日

殺虫剤の選択性

対象とする害虫に対して高い毒性(殺虫活性)を示すが、人畜を含む哺乳動物や有用昆虫など非標的生物に対して低毒性の殺虫剤のことを「選択性殺虫剤」といいます。」(農研機構「農業技術事典」より)


対象害虫が広いものを「選択性が低い」、少ないものを「選択性が高い」といいます。


昔は害虫益虫の区別なく、日本を爆撃した米軍よろしく無差別攻撃する殺虫剤がほとんどだったのですが、現在では特定の害虫を狙う選択性殺虫剤が増えています


ときどき「農薬の毒性はどんどん強くなっている」という被害妄想的記述を目にしますが、実際には選択性が高まることで、人畜や益虫への毒性はどんどん低減しています。


BTはバチルス・チューリンゲンシスという細胞を利用した薬剤で、摂取すると胃の中で殺虫性のたんぱく質を作りだして、虫を死にいたらしめますが、アルカリ性の消化液でしか形成されないため、胃液が酸性の哺乳類には効きません


IGRは脱皮を阻害したり、逆に虫を混乱させて脱皮を無理やり促進したりするクスリなので、脱皮をしないハチには効果がありません


私たちはダニを退治するために殺ダニ剤を使います。つまりダニは普通の殺虫剤では死なないということです。


うちでは前回の防除で、ネオニコ系殺虫剤の代わりに有機リン系殺虫剤のダイアジノンを使いました。ダイアジノンはシンクイガ(の幼虫)やワタムシ・一部のカイガラムシにはよく効きますが、アブラムシには効果が劣るとされています。


実際、散布した後でもアブラムシはわんさか・・・


ガの幼虫を殺せる薬でも、あんな小さなアブラムシを殺すことはできないのです。こんな代物がどうしたら人間に悪影響を及ぼすのか聞きたいくらいです。


選択性とはちょっと違いますが、虫にはよく効くけど、人体毒性は低い、という殺虫剤もあります。

戦後、日本でもよく使われたDDTもそうです。


あの時代、DDTは世界中でびっくりするくらい大量に使われたらしいですが(ちなみにDDTの殺虫効果を発見した博士はマラリア撲滅の功績によりノーベル賞を受賞)、なぜそんなに大量に使われたのかというと、人体毒性が(少なくとも急性毒性は)低かったからです。


私は「DDT世代」ではないので話でしか知りませんが、戦後しばらくの間、人々はノミやシラミを退治するためにDDTを使いまくりました。頭からふりかけたり背中に入れたり、布団にまいたり、もうやりたい放題。今考えるとゾッとしますが、当時はそれによる中毒例はほとんどなかったようです。

DDTが製造中止になったのはその環境中に長くとどまって分解されにくい性質ゆえでした。


ちなみにプロレス技のDDT(脇に相手の頭を抱え込んで後ろへ倒れこみ、頭部をリングに叩きつける技)の名称はこの殺虫剤に由来しています。

なかなかユーモラス。


posted by 農天気 at 20:48| Comment(0) | よもやま話

2019年07月06日

似て非なるもの

先日のブログで、スピノシン系殺虫剤「ディアナ」の作用機構が「ネオニコチノイド系殺虫剤」とほぼ同じ、ということに驚いたということを書きました。


農薬屋さんに聞いたところ、「いやネオニコとは違う」という答えでした。


どういう風に違うのか知りたいのですが。


ただ、農薬というのは分子構造がほんのわずか異なるだけで、毒性その他が全く違ってくるらしいです。


戦後しばらくの間、農業生産現場で使用されてきた殺虫剤パラチオンは、優れた殺虫効果を持っていましたが、その動物や人への毒性の強さから1971年に使用が禁止されました。


私は生まれてもいないので、もちろん使ったことはありません。


日本発の有機リン系殺虫剤「スミチオン」はパラチオンと非常に類似した分子構造を持ち、高い殺虫効果を維持したまま、毒性を著しく低くすることに成功した商品で、40年以上現役です。毒性の強さはパラチオンの100分の1と言われています。


有機化学の用語に「誘導体」なるものがあります。


デジタル大辞泉によると、

ひとつの化合物の分子構造の小部分が変化してできた化合物。基本構造はそのままで、一部が他の原子団と置き換わったもの


わかるようなわからないような・・・


なにしろ、高校時代、基礎解析と化学のテストでダブル一桁得点を獲得した理系音痴なので・・・


ともかく、母体をちょっといじくることにより、類似したいろんな化合物ができる、それを誘導体と呼ぶらしいです。


スミチオンはパラチオンの誘導体ですが、その毒性は全く違います。


「似ていて非なるもの」が世の中にはたくさんあるようです。


ちなみに飛躍的に安全になったスミチオンでさえ、その選択性の低さ(広範囲の虫に効いてしまう)ゆえか、長野県の果樹現場ではほとんど使われていません。


選択性については(多分)次回。

posted by 農天気 at 21:34| Comment(0) | よもやま話